月刊てんとうむし畑たより第101号

 2月に入り、春を思わせる暖い日が続いたとほっとしたら強い寒気が入り再び雪景色。「雪が雨にかわる」という“雨水”の2月18日も、雪が降る一日でした。そしてまた暖かな日。三寒四温のとおり、春が近づいてきています。庭の梅もほぼ例年通り、2月なかば過ぎで咲き出しました。こんな日は柴犬のハナも日向ぼっこが気持ちよさそうです。

タネをまくということ

 春は種まきの季節。

冬の間は寒すぎるし、畑も雪におおわれているので種まきも限られてしまいますが、旧暦の新年を迎えれば次々と種まきが始まります。春、夏に向けて毎週いろんな野菜の種をまきます。こまつな、ほうれんそう、レタス、キャベツ、ラディッシュ、トマト、なす、ピーマン、万願寺とうがらし、きゅうり、かぼちゃ・・・(まだまだたくさん)。

 土をまいて、すぐ発芽する野菜もあれば、なかなか発芽しない野菜もあります。なかなか発芽してくれない野菜のタネは、条件の良い時だけ発芽できるよう、たいてい発芽抑制物質に覆われています。

 野菜の種類によって種が発芽するための条件もいろいろです。ほうれんそうや人参の様に、雨季・乾季のある地域が原産の野菜は乾季に発芽したら大変!

そこで、雨季のたっぷりの雨で発芽抑制物質が洗い流されて発芽します。ほうれんそうや人参は、たっぷりの水やりで発芽させるのです。トマトやかぼちゃの様に、鳥や獣に食べられることで子孫をあちこちに広げる野菜は動物のお腹で消化されることで発芽抑制物質が取り除かれます。こういう野菜は、食べてウンチから種をとるのが一番。でもそういう訳にはいかないので、種をゴシゴシと洗います。特に、暑い夏が好きなピーマン、トマト、なす等は、25℃以上の温度がないと発芽しません。そこで、発芽抑制物質を取り除いた後、濡れタオルにくるんで腹巻に入れて、2〜3日お腹で温めます。その間は怒ったり悲しんだりすることは厳禁。いつもニコニコ、楽しく過ごします。なぜって?だってお腹に巻いている種にも人の感情が伝わるのですから。この2〜3日の間だけでなく、畑に行く時も野菜と接する時もスタッフはいつもニコニコ楽しく過ごしていますよ。

 2月27日は満月。月の暦に合わせて、夏野菜の種まきをするので満月の少し前にお腹にまきます。全ての生き物は月の満ち欠けに合わせてバイオリズムがあるそうです。助産師さんにこの話をしたら、「そうそう、満月と台風の近づく頃は、赤ちゃんの生まれる確率も高いのですよ。」と仰っていました。

人間もまた同じなのですね。

(※市販のタネには、たいてい発芽抑制物質が取り除かれています。)

 農家にとって、種まきは大切な仕事です。

 家庭菜園を楽しんでおられる方も種まきがとっても大切。種をまく時って「ちゃんと発芽してね」と祈ったり、「たくさん美味しい野菜ができますように」って願ったりしますよね。たわわに実った姿を想像したり、収穫の喜びを想像したり、種まきは本当に楽しいひとときです。

 東日本大震災の悲惨な出来事からまもなく10年を迎えます。当時、東北大学の学生が有機農業を学びにきていました。(ずいぶん前のお便りに何回も登場した“たっくん”です。)卒業したら京丹後で活動したいとの希望もあったのですが、地元の大災害。すぐに荷物をまとめて、ボランティアに行きました。時々、近況報告があったのですが、それはそれは壮絶な便りでした。

 そんな中、4月に入ると「梅本さん、なんでも良いから種を送って下さい。」と連絡がありました。詳しく聞いてみると、4月に入り被災した人たちの間から「野菜の種を蒔かんならん」という声をたくさん聞いたそうです。自分たちの家を失い、中には家族を失った方からも・・・。

 すぐに仲間に声かけをして、ひまわり、なす、かぼちゃ、豆、きゅうり、コスモスなど本当にたくさんの野菜、花の種が集まりました。荷造りした段ボールの表に、大きく、「丹後から、希望の種を送ります。大変でしょうが、がんばってください」と大きく書きました。その後の報告によると、それまで険しい顔をしていたおばあちゃんたちは笑顔になって、クワをふるって、畑を作り、タネをまいたそうです。なんでも、おばあちゃんたち、野菜自慢の話でもちきりになり、その後も険しい顔も減り、笑い声が絶えなかったそうです。

 「タネをまく」ってなんだかすごいことなんだなって感じた瞬間でした。種まき行為は、同時に心にも希望というタネをまいているんだなって思いました。

 状況は違いますが、今コロナ下で誰もが自由に行動できず、じっと我慢の日々が続いています。大人はある程度理解できるでしょうが、子供たちは本当にかわいそうだと思います。自由に遊び回ることができなかったり、卒入学式が制限されたり。みんな、辛い時、我慢しないといけないことたくさんあるでしょう・・・

 こんな時だからこそ、一緒にタネまきしましょう。

 そう、希望のたねをまきましょう。大人も子供も。

 これからしばらく毎週種まきが続きます。一緒に種まき体験をされたい方はいつでも連絡ください。種まき出来なくっても、私たちの野菜や加工品、そしてorganic cafeてんとうむしばたけのお店が、皆さんの希望のタネであり続けてゆきたいと思っています。