月刊てんとうむしばたけ便り(第114号)
セミの鳴き声がヒグラシに加えて、ツクツクボウシの声が聞けるようになりました。小学生の頃、このツクツクボウシの声が聞こえてくると、「あー、夏休みもあと少しだなあ~」とさびしく感じたもんです。今では、猛暑の峠が越えた合図として聞こえてきます。
毎日暑い暑いと言いながらも、京都市内から来られるトラックドライバーの方は、「こちらは涼しいですね」とおっしゃるので聞いてみると、35℃はあたりまえ、39℃のときもあるとか…。そういえば、うちの勝手口の温度計は、日中高い時でも32℃。あー、京丹後でよかったと、少し幸せを感じました。
―・―・― 醗酵のある暮らし ―・―・―
8月後半は、秋冬野菜の仕事と併せて、黒部醤油組合の醤油仕込みで忙しくなります。小麦を鉄鍋で煎り、製粉機で荒粉にします。大豆で蒸して熱いうちに小麦荒粉と種こうじ菌を合わせて、3日間醤油こうじ作りのスタートです。
温度が上がりすぎると納豆菌がはびこり、温度が下がりすぎると酵母菌がはびこって失敗となるので、この3日間は気が抜けません。もちろん、朝食の納豆は止め、夜のお酒も控えないとダメ。
先日、昔ながらの醤油作りをしている醤油会社の方と話をする機会がありました。私たちの組合の話をすると、自分たちで昔ながらの技法と大きな杉樽で仕込む組合なんて他に聞いたことがない、文化財レベルじゃあないか!と言われました。
いつから組合があったのでしょうか…。蔵に残る古い帳面は、昭和50年頃のものでした。その以前は、別の場所に蔵があったそうで、その記録は見当たらないようです。そのまた昔、廃業した造り酒屋から大きな杉樽を牛が牽いて黒部に来たと聞いたことがあります。少なくとも、まだトラックのない時代から組合があったそうです。長く伝わる文化財レベルのこの組合、これからもずっと続けてゆかねば…と思います。
もう一つ聞いたのが、ほとんどの醤油会社では雑菌の繁殖を防ぐために秋から冬にかけて仕込みを行うそうです。プロでさえ秋冬なのに、素人集団の黒部醤油組合は、昔から8月。なぜだろう…。長老たちに聞いてみました。昔は、ほとんどが米農家で、今のように機械はなく、稲刈りがはじまると、年を越してまでずっと忙しかったそうです。その合間をぬって、漬物つくり、味噌つくりに、ワラ仕事(縄や、むしろ、わらじを編む仕事)…、まったく暇なく。そこで少し余裕のあるお盆過ぎに醤油仕込みを行ったのでは…どうもこういうことの様です。それにしても、一番難しい夏ですから、技術的にも高いということ。誇りある組合だと思います。
そして、この醤油仕込みが終われば、9月に丹後の郷土味噌「しゃーみそ(菜味噌)」つくりがあります。しゃーみそつくりが終われば、毎日の納豆つくりが始まり、晩秋にはたくあん漬け、冬には味噌仕込み、6月に梅仕事…。一年を通じて、醗酵とともに暮らしている感があります。
5月に月刊おたよりにも書きましたが、畑の土には1gに千億を超える微生物が活躍しており、人間の体には何十兆の微生物が共存しています。微生物のおかげで、私たちは健康に暮らすことができ、実は、地球は微生物が牛耳っているんじゃあないか、なんて思ったり…。美味しく栄養たっぷりの野菜も、微生物のおかげで育ちます。
京丹後市は長寿のまちとしても有名だそうです。長寿の秘訣も昔から伝わる京丹後ならではの、醗酵食品のおかげかもしれません。こんな醗酵のある暮らし、京丹後に移住して楽しみませんか?
○お知らせ○
8月29日(木)17:00~てんとうむしばたけの駐車場で納涼祭やります。めだかすくい、バーベキュー、流しそうめん、いろいろ、お子さん連れてぜひ来てね!