月刊てんとうむしばたけ便り(第115号,2024年9月)
9月もあと少しだというのに、この暑さはどうしたことでしょう。暑いだけでなく、植物の生育に大切な雨が全くふらない。雨雲レーダーみていると、丹後半島の近辺までは雨雲が流れてくるのですが、どんどん消えていく、悲しいくらいに雨が降りません。この9月の猛暑と干ばつは、私の記憶の限り、初めての厳しさです。
こんな暑さの中でも秋が見つかるかな? と畑のまわりの山を歩いてみました。
あった、あった! 山芋の小さなむかご! 若いススキの穂も出ていました。萩の赤紫の花も小さく咲いていました。そうそう、秋のキノコ、初茸(ハツタケ、おいしい)が出るころなのですが、さすがにこの干ばつでは、キノコは全く見つけられません。
雨不足でも、例年より小さなミョウガの実も収穫。ミョウガは、今夜の冷やっこの薬味と、ぬか漬にしてたべましょう。夏の間、きれいな花を咲かせてくれた蓮の種も秋の味覚です。少しいただいて、炒って食べます。
そして秋といえば、稲刈り。天気が良いので、コンバインがぬかるみに足をとられることもなく、次々と稲刈りがすすんでいます。世間では米不足が騒がしいようですが、新米が食べられるのもあと少しです。
―・―・― 本当の食育 ―・―・―
ちょうど8・9月は、大学生の夏休みに当たるので、学生の畑見学や有機農業についての研究に来る機会がよくありました。先日も20名の大学生が来訪、畑案内をしたところです。「野菜をしっかり食べているの?」この質問に、意外と多いイエスの答え。朝ごはんもしっかり食べているようでした。小・中学校のときに食育授業もあり、大学生になっても実践していると話をしてくれた学生もいました。同時に、コンビニ弁当や菓子パンで夕食を済ましてしまったり、宅配ピザのバカ食いも楽しんでいるようです。美味しいケーキを見つけると、財布のある限り買ってみることもあるって!
「私たちの体は、食べたものだけで出来ている。いい食べ物をえらべば健康になり、悪い食べものをえらべば病気になる!」このおたよりを読んでおられる方はもう十分にわかっていることでしょう。わかっていても、つい、悪い食べものを選んでしまうことも…あるいは、それしかない場合も…。
白砂糖たっぷり、ブドウ糖果糖液糖、油っこいもの、味付けの濃い食べもの、食感を良くする添加物……どれも脳が美味しいと感じてしまうようです。食品会社の広告を見て「食べたい!」これも脳が指令しています。でもね、身体は悲鳴をあげているかもしれません。胃・腸・肝臓……。さらに食品業界は、賞味期限を長くするため・少しでも価格を抑えてたくさん消費させるため、あの手この手の添加物が加えられて提供してきます。
どうも、脳が欲する食べ物と、身体が欲する食べ物は、ズレがあるって思います。脳が欲する食べ物だけを選んでいると、病気に向かっていく……だからこそ、その脳を正しく導くために「食育」が必要なのですよね。
ちなみに、京丹後市の食育推進協議会で配られた食育のパンフレットには、「朝ごはんしっかり食べましょう」「バランスの良い食事」「地産地消、郷土料理を学んで食べよう」……いいこと書いてあるな……いやいや、これって当りまえでしょう! と、ちょっと嘆いてしまいました。他の自治体も、似たような食育のパンフレットを作製していると思います。食事のほとんどを、スーパーのおそうざい、コンビニ弁当やファーストフードで済まされる時代、あふれる食料の中から本物を選ぶ力を養うのが「本当の食育」だと思いませんか!
先日、新聞をよんでいると、「昨年一年間で日本国民が支払った医療費総額は74兆円」と記事がありました。日本の国内農産物の総売り上げは、それに比べてたったの9兆円! 体をつくる食べものに支払う金額より、病気になったから治す金額の方が圧倒的に多いなんて!
「医は食に学べ。食は農に学べ。農は土に学べ。」
好きな言葉の一つですが、改めてこの言葉の重さを感じました。本当の食育もこの言葉にあると思います。
さあ、今日も明日も、みんなの健康のために、よい土を育ててゆこう!!